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日本のソフトウェアビジネスの将来を計る

もしもあなたがユーザ企業だとして、ちゃんとした品質のソフトウェアを、納期どおりに納めると、ITベンダーから提案されたならば、どう思うでしょうか。

これが自動車を購入するときのおはなしであれば、あたりまえということかもしれません。セールスマンが納入は3週間後と言えば、ちゃんと3週間後には自動車は届くことを期待しますし、よっぽどのことがない限り、納期が遅延することはないでしょう。

しかもカタログスペックどおりの性能を持っている自動車であり、かつ雨に降られたときに、雨漏りがしないことは至極当然のことです。

しかしこの当たり前の常識とも言えることが、なぜかソフトウェアに対しては通用しないのです。

残念なことに、いまのソフトウェア開発プロジェクトの、4つに3つは失敗していると言われています。つまり納期遅延が起きるか、品質の確保ができないか、予算超過しているプロジェクトが、75%もあるということです。

ですから、こういった現状を知っているユーザ企業であれば、そのベンダーの提案に、なんらかの期待を持つのではないでしょうか。

それではそのベンダーがさらに、競合が提案する予算の半分で、納期と品質の目標を達成するとコミットメントしたならばどうでしょうか。

いや、逆にあなたは躊躇するかもしれません。本当だろうか。大丈夫だろうか。そんなうまい話があるのだろうか。

しかしそのベンダーが、実績に裏付けられた提案をしているとわかったならば、どうでしょうか。

迷うことなく、そのベンダーの提案を受け入れるのではないでしょうか。ということは、このようなことが起きれば、従来、常識とされていたコスト、納期、品質水準でしか提案できないベンダーは、淘汰される可能性が出てくるということです。

そしてこれは現実に米国で起きていることなのです。調査会社のガートナーは、近いうちに、プロジェクトが10あるとすれば、そのうちの1つは、インドのITベンダーが元請けとして受注する時代になることを予測しています。

これはインドのITベンダーが、従来の人的コスト面の競争力だけではなく、元請けになることができるだけの、プロジェクトマネジメントおよびソフトウェアエンジニアリング、上流コンサルティングの実力を着実につけてきたということを意味しています。

もちろん米国のITベンダーも指をくわえてふるい落とされることを待つわけはありませんから、競合になりかねないオフショアベンダーを使いこなすことも含めて、自社の競争力を高めるべく、手を打っていることでしょう。

しかし、米国の従来型の元請けベンダーは、収益面での強烈な圧力を受けることを避けることはできませんし、現実に淘汰されるベンダーが出てきても不思議ではないということです。

ひるがえって日本の現状をみてみましょう。耳に入ってくるのは、インドや中国、いわゆるオフショアベンダーとのプロジェクトの失敗事例ばかり。ときにはその実力に疑問符をつける意見もあります。

しかしオフショアベンダーとのプロジェクトの失敗責任をオフショアベンダー側だけに負わせることができない面があります。つまり発注側が発注責任を果たしていないことが往々にしてあるのです。例えば、要求仕様が極めて不鮮明であることはないでしょうか。要求が不鮮明であるとき、オフショアベンダーを何を納めるべきかをどうやって判断するのでしょうか。

といった問題は頻繁に耳にするのですが、少なくともオフショアベンダー脅威論は聞こえてきません。この点は少なくとも米国との温度差がかなりあるようです。

なぜなのかは正直わかりませんが、日本に近い中国ベンダーの、インドベンダーとの実力格差がまだあるということが、理由のひとつとしてあるのかもしれません。日本語の壁をクリアして、さらに日本の商習慣を十分に理解して、プロジェクトをまるまる抱え込むことができるだけの体制をとることができたオフショアベンダーがまだ現れていない。

しかしいずれ時間の問題でしょう。従来の半分のコストで、優れた品質のソフトウェアを納期どおりに届けることができたオフショアベンダーがひとつ実績をみせたら・・・

そのときにはじめてオフショアベンダー脅威論が日本でも勃興するのかもしれません。しかしそのときに慌てふためいても遅いのではないでしょうか。

ところで、ここで述べてきたことにはひとつ落とし穴があります。日本では・・・、米国では・・・とドメスティックな観点からの比較論を述べていますが、グローバルな製品展開をしている一部のメーカーは、ソフトウェア開発の体制もグローバルな分散体制を基盤に構築し、24時間体制で、ソフトウェア開発競争力を高度化しているのです。

そしてこれは現に今、起きていることです。ソフトウェアの比重を高めている日本のメーカーも、グローバルな製品展開をしているのであれば、同じくグローバルな製品展開をしている欧米のメーカーと、目にみえるハードウェア製品で競争しているようにみえながら、ソフトウェアものづくりの能力で、真っ向から競争している状況にあるのです。

まったく待ったなしです。日本のソフトウェアビジネスの将来は、すでに今、決められつつあるのです。